何度もおじゃましているはずなのに、ボンヤリとしか思い描けないアノ有名人のお宅。
それもそのはず、アノ有名人とはドラえもん、ちびまる子、サザエさん、クレヨンしんちゃん、ブラックジャックなどの面々なのだから。
そもそも、
ボクらは彼ら(彼女ら)のお宅におじゃましたことはない。物語という枠組みの中で、彼ら(彼女ら)のお宅を垣間見てきただけなのだから。
ドラえもんに招待されたわけでもないし、サザエさんに招待されたわけでもない。
けれどもボクらはドラえもんの寝床の押入れもサザエさんの茶の間も見たことがある。たとえボンヤリでも、
それはまるで自分の家の中のように身近に感じることができるのだ。
ボンヤリとしか思い描けないお宅を、マンガやアニメで背景として描かれる主人公の住まいの断片を集めて、間取りを描いた設計士がいる。
なぜそんなことをしたのか?物語で重要なのは登場人物だ。
多くの人々に愛される物語には、魅力的な登場人物がいる。
登場人物の魅力を語るうえで
もっとも効果的な方法が、彼ら(彼女ら)のお宅を描くことなのだ。
多くの物語の冒頭では、主人公が自宅で目覚めるところからはじまる。
これはけっして偶然ではない。物語の冒頭で主人公の自宅を描くことで、これからはじまる物語の主要な登場人物がどんな暮らしをしていて、どんなことに興味を持ち、どんな境遇にあるのかをいちはやく観客に提示することができるのだ。
狭い部屋に質素な家具。机の上には球技大会の表彰状。壁には汚れたスパイク。
そんな部屋に住むのは、サッカー選手になることを目標に日々練習に精を出している青年かもしれない。
サッカー選手になるという彼の夢を知った観客は、ベットでまだ寝息を立てている青年を応援する気持ちの準備が知らず知らずのうちにできてしまうのである。
観客に応援される主人公。
これこそが多くの人々に愛される物語の第一条件である。
ということは、登場人物の自宅の間取りを描くことは物語の基本でもあるのだ。
だから設計士は、マンガやアニメで背景として描かれる主人公の住まいの断片を集めて間取りを描いたのである。こうしたことは計士だけでなく、マンガやアニメを読んだり観たりするあらゆる人々が行ってきたことであるが、実際に間取り図を作成したのは、たいへん興味深いことだと思う。
ボクらが夢中になった大好きなマンガやアニメの主人公たちがどんな間取りの家に住んでいるのか。
自分が思い描いていたイメージと重ね合わせることで、きっと
新しい発見と楽しみがあることだろう。
さぁ、間取りという「もうひとつの物語」の玄関の扉をノックしてみようではないか!